ディープウォーターホライズンは、2010年に発生したBPオイル流出事故を題材とした実話映画である。この事故は、メキシコ湾にあるオフショア油田において、海底にある海底油井から原油が流出するというものであり、計画された設備の不備により、多くの命が失われることとなった。
映画のストーリーは、BPのオフショア油田「ディープウォーター・ホライズン」に乗り込んだ作業員たちが、油井から原油が流出する事故に直面し、自らの命を守りつつ、事故の原因を究明しようとするというものである。しかしながら、この映画は、単なる事故の映画ではなく、それぞれの作業員たちの背景を丁寧に描き、人間ドラマを展開することで、観客の共感を呼び起こすような作品となっている。
映画の中で、最も印象的なのは、元CIAエージェントであるロバート・カフェアが演じる「ミスター・ジミー」の存在である。ジミーは、作業員たちに救出された猫を預かり、毎日彼らを助けるために行動することで、彼らの生きる希望を与えてくれる。また、彼は、事件の起こった日から、彼を牛耳るBPの幹部たちに対して、事件の調査や被害者への補償のための調査を訴え、最後までその声をあげ続けた。
このように、ディープウォーターホライズンは、事件が起こった背景やその後における事実の把握にも取り組むことにより、観客が事件そのものだけでなく、それに至る過程やその後も、被害者や関係者たちが直面する苦難に対して共感することを訴えている。
なお、映画で描かれている「シリアナ」とは、実際に存在した伝説的なタンカーである。このタンカーは、1979年にイランのホーランジャンで発生した事件によって、アラブ首長国連邦への輸送を強制的に停止され、その後は謎の船として、遭難者たちからのSOS信号によって発見されていた。そして、シリアナが最後に目撃されたのは、1991年のアラビア海におけるイラク戦争の際にであった。
このように、ディープウォーターホライズンは、単なる事故を描くだけでなく、事件そのものに留まらず、それに至った歴史や、それに直面した人々の心情にも向き合い、多くの観客に深い感動を与えた。そして、この映画を見た人たちが、そのような悲劇を二度と起こさないように、そして、同時にこういった事件の被害者たちを支援するための行動をとることが求められていることを、改めて訴えることとなった。